方法記憶と読書

昨日の記事では大学受験生のころ、最も参考にしたWebサイトを再検討した。
http://d.hatena.ne.jp/nijiku/20090202/1233575305
端的にまとめれば、勉強はじっくり(考えて)繰り返せ、というのが、同Webサイトの主張のこのブログにおける修正案である*1

最新脳科学が教える 高校生の勉強法    東進ブックス

最新脳科学が教える 高校生の勉強法 東進ブックス

『高校生の勉強法』もよく参考にした受験参考書の一つである。早起きノウハウについて書いたときにも紹介した池谷裕二氏の著作だ。脳科学の立場から勉強を考える、というコンセプトだが出版から7年経った今でも内容は色あせない。

本書の中では「方法記憶」という概念が登場する。

「知識記憶」と「経験記憶」の二つの記憶について説明してきました。しかし、皆さんの脳の中にある記憶の種類は、この二つだけでしょうか?(略)もう一つ大切な記憶がありますね。(略)たとえば、自転車の乗り方や服の着方などの記憶です。つまり、ものごとの「手順」や「やり方」です。(略)こうした記憶は「方法記憶」と呼ばれています。

方法記憶をつかった勉強方法は数あるが、たとえば、論理や理屈でものを覚えることもその一つである。いいかえれば、記憶は「失敗」と「繰り返し」によって形成され強化されるものなので*2、じっくり考えること(=論理や理屈で考えること*3)を繰り返せ、ということになる。昨日の主張は、脳科学の観点からも補強できそうだ。

しかし、試験勉強や受験勉強は締切りや「よい点数をとらなければ」というプレッシャーからじっくり考える余裕をなくしがちである。当の私も「理屈」では本書の主張を理解していたつもりだったが、実際には「あまり考えず」勉強していた。「勇気を持って、ゆっくり行け」は北京五輪での北島康介選手だけでなく、上達したい人すべてへのエールといえるかもしれない*4

*1:補足すれば、じっくり考えることで、そもそも繰り返す数が少なくても記憶と理解が得られる場合があるということである

*2:繰り返すことによって神経細胞同士の結合が強くなることが実証されているそうである

*3:加えて想像力を働かせ具体例を考えてみることで「扁桃体」を刺激し、記憶が促進されることも期待される

*4:http://www.nhk.or.jp/professional/backnumber/080902/index.html