「なぜ」を問う前に「何」を問う

 「なぜを五回問え」トヨタ生産方式で登場する言葉だ。「なぜ」という質問を五回問うことで問題の核心に迫れるという。スモール・ワールド現象にも通じる方法論かもしれない(西口敏宏『遠距離交際と近所づきあい』)
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 しかし、なぜを問う以前にしなければならないことがある。それは、そもそも問題が何であるかを問うということだ。「なぜ」がWhy?を問う質問なら、What?を問う質問である。

 たとえば「なぜ勉強ができないのだろう?」と悩んでいる人がいるとする。その時にはまず「そもそも勉強ができない、とはどういうことか?」を考えるのだ。テストができないことなのか?作文が書けないことなのか?数学の問題が分からないことなのか?歴史の用語が覚えられないことなのか?具体的にどういう場面で「なぜ勉強ができないのか?」という疑問を持ったかをつぶさに、広範に想像してみるのである。その上で問題を特定して、なぜ「英文法の問題で正答を導けないか」を問うのだ。

 どうして「何」を問うことが問題解決に有効となりうるのだろう。それは、問題が鮮明になるからであると考える。問題を明晰に理解できるから、どこを「カイゼン」すればいいかがより一層明らかになるということだ。問題が曖昧なまま「なぜ」を繰り返しても誤った方向に考えが向けられる恐れがある。

14歳からの哲学 考えるための教科書

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本書の中では、なぜの前に「何」を問う思考がよく展開されている。典型的なのは次の様な例だ。

 試しに訊いてみようか。生きていることはつまらないって悩んでいる君、じゃあ、生きているとはどういうことなのか、わかっているのかな。生きていることはつまらないって君の言う、その「生きている」とはどういうことなのか、本当にわかっているのかな。

 闇雲に「なんで?」を問うても答えが出ないときもある。そんなときはまず「どゅこと?」を問うことである。